NTTエレクトロニクスと米国 Acacia Communications社、次世代コヒーレント光信号処理(DSP)ASICで相互に接続可能な動作モードを提供
~ 100G プラガブル光トランシーバのリーチ拡大に貢献 ~
2013年9月24日

NTTエレクトロニクス株式会社(以下NEL)と米国Acacia Communications Inc.(以下、Acacia)は、それぞれ開発を進める100Gb/sコヒーレント光通信向け次世代デジタル信号処理 ASIC(DSP)(※1) において、中距離向け動作モードの相互検証を完了しました。複数ベンダの製品間でも互いに通信できる100Gb/sプラガブル光トランシーバ(※2)の適用領域を、イーサネット標準(※3)が規定する30kmを超えて拡大できることになると期待されます。

今日、10Gb/sプラガブル光トランシーバとして、業界デファクト製品10GBASE-ZR(~80km)が中距離メトロアクセス用途に数多く利用されています。このため、100Gb/sにおいても、イーサネット標準(~30km)を超えてなおプラガブルに交換できる光トランシーバ・ソリューションの登場が待たれます。長距離向け100G DSP開発で業界をリードするNELとAcaciaは、それぞれの次世代DSP開発を進めるにあたって、100Gプラガブル向けに消費電力を抑える中距離動作モードにおいては互換性を持たせることで合意し、このたび当該機能の相互検証を完了しました。変調方式には長距離向けに実績のある DP-QPSK(※4)、誤り訂正符号には国際標準として確立されたGFEC(※5)をそれぞれ採用することにより、擾乱にも強い確実な互換性を提供します。

NELは、100G DSP製品を販売する唯一のチップベンダとして、世界中のシステムベンダや光トランシーバベンダが提供する長距離DWDM 100Gソリューションに幅広く採用されています。一方、Acaciaも、内蔵DSPや集積光部品の開発を自ら手掛ける先駆的な100G光トランシーバベンダとして、長距離100G製品市場の開拓に貢献してきました。業界を代表する両社による今回の連携は、デジタルコヒーレント光通信方式の適用範囲を、従来の長距離向けから中距離プラガブル光トランシーバ向けにまで拡大する重要な契機として、世界中のサービスプロバイダから大きな期待を寄せられています。

「100Gコヒーレントのアプリケーションは、長距離から、メトロ、さらには中距離にまで拡大しつつあります」とドイツテレコム(DTAG)は述べています。「プラガブル光モジュールは自由に交換できなければならないので、DTAGはキャリアとして、世界的な大手システムベンダと共に、相互接続可能な100Gコヒーレント光通信方式の標準化を早くから国際機関に提唱してきました。今回のNELとAcaciaの発表は我々の要求に合致しており、その活動を強く支持します。DTAGはこうした相互接続のために、シンプルで実績のある変調方式(たとえば QPSKベースの方式)と拡張FEC (EFEC)の国際標準化を引き続き推進していきます」

「100Gのような光技術ソリューションは、次世代の広帯域サービスを高効率かつ経済的に提供できるよう、我々のネットワークが進化しスケールし続けるのに役立っています」とComcastの上級アーキテクトであるシャミム アカター氏は述べています。「100Gラインサイドで複数ベンダが相互に接続できることは重要です。ベンダは常に革新的であり続けねばならなくなるから、です。現在でも柔軟かつ経済的に構築されている我々のネットワークに、きっとさらなる大容量化をもたらしてくれることでしょう」

「100Gを使うネットワークオペレータとして、また100Gコヒーレント技術を提供する立場で、NTTは、相互接続という今回のマイルストーンをうれしく思います」とNTT未来ねっと研究所 富沢将人 企画部長は述べています。「以前に我々は、NELのDSPを採用した複数の光トランシーバベンダ製品を用いて、多様な光コンポーネント間でも、DP-QPSK方式を用いる限りは性能劣化なく相互に接続できることを確認(※6)しました。今回、相互接続性が異ベンダDSP間にまで拡張されたことで、100Gコヒーレント技術の優れた能力が改めて示されました。NTTは、より高効率な光伝送に向けて、さらなる多値変調フォーマットの研究開発も将来に向けて進めていきます」

NELの100G コヒーレントDSP製品は、現時点で市場に流通する唯一のASSP(※7)ソリューションとして、光通信業界に変革をもたらしています。2013年3月には、プラガブルな100G CFPモジュール向けも視野に、次世代の低消費電力DSPに関して米国ブロードコム社とのビジネス連携を発表(※8)しました。

Acacia の100G コヒーレント光トランシーバモジュール製品は、キャリア/データセンター/ケーブルの各事業者やサービスプロバイダに、比類なき光性能を低コストで提供しています。2013年5月には新たな$20 millionの出資ラウンドを成功させて、マサチューセッツ州メイナードの本社を著しく拡張しました。

NTTエレクトロニクス株式会社

本社所在地:神奈川県横浜市
代表取締役社長:萩本和男
設立:1982年
NTTエレクトロニクス株式会社の詳しい情報は以下のURLをご参照ください。
https://www.ntt-innovative-devices.com/

アカシア コミュニケーションズ社(Acacia Communications Inc.)

本社所在地:米国マサチューセッツ州メイナード
CEO:ラジ・シャンムカラジ(Raj Shanmugaraj)
設立:2009年
アカシア社の詳しい情報は以下のURLをご参照ください。
http://www.acacia-inc.com/

用語解説

※1
(コヒーレント光通信向け)デジタル信号処理 ASIC (DSP:Digital Signal Processor
コヒーレント光通信向けのDSPは、偏波多重された高速光信号をコヒーレント検波する際に、分散補償や軟判定誤り訂正などのデジタル電気信号処理を駆使して、ファイバ伝搬で歪んだ信号波形から正しい信号データを復元するキーデバイス。ASIC(Application Specific Integrated Circuit)とは特定用途向けに設計・開発されたICのこと。
※2
プラガブル光トランシーバ
ルータやスイッチ、光伝送装置などにおいて、差し換え可能なトランシーバポート向けに提供される光トランシーバ・ソリューション。複数ベンダが外形寸法などを共通化して製品供給する業界合意MSA(Multi Source Agreement)として規格化されるのが特徴。10Gb/sでは、第三世代のXFPや、さらに小型のSFP+ として、イーサネット標準である短距離(~100m)、近距離(~10/30km)に加えて、業界デファクト製品により中距離(~80km)もカバーされています。100Gb/sでは、短・近距離向けに第一世代のCFPが普及しつつあり、中距離向けのソリューションが期待されている状況です。
※3
イーサネット標準
国際標準 IEEE802.3 イーサネット規格。主な仕様として10Gb/sでは10GBASE-SR/LR/ERの3種類、100Gb/sでは100GBASE-SR10/LR4/ER4の3種類が、それぞれ標準化されています。SRはマルチモード光ファイバを用いる短距離(~100/300m)向け、LRとERはシングルモード光ファイバを用いる近距離(~10/30km)向けの規格です。
※4
DP-QPSK変調方式(Dual-Polarization Quadrature Phase-Shift Keying
偏波直交4位相偏移変調方式。直交するそれぞれの偏波に対し、変調された四つの光位相(0°、90°、180°、270°)に、それぞれ2ビットによる信号で4種類の情報を割り当てる変調方式。
※5
誤り訂正符号GFEC(ITU-T G.709)
光転送ネットワーク・インタフェースの国際標準規格ITU-TG.709 OTN(Optical Transport Network)が規定する標準誤り訂正符号。リードソロモン符号RS(255、239)を採用、符号冗長度は約7%。
※6
(複数ベンダの100G光トランシーバモジュール間で)相互に接続できることを確認
「NTTエレクトロニクスが低消費電力100G用デジタルコヒーレントDSP-LSIを製造・販売開始」
2012年2月29日 NEL報道発表
製品化の背景 (3) NEL 100G DSP-LSIおよび、用語解説 ※3-7 参照。
※7
ASSP(Application Specific Standard Product
特定用途向け汎用IC。半導体メーカーの主導により、特定の用途のために設計・開発され、顧客に対して販売されるICのこと。
※8
米国ブロードコム社とのビジネス連携を発表
「NTTエレクトロニクスとブロードコム社、次世代コヒーレントDSPでビジネス提携 - 最先端 CMOSプロセス技術で100Gモジュールやラインカードの小型化・高性能化に貢献 -」
2013年3月19日 NEL 報道発表

<本件に関するお問い合わせ先>

〒221-0031 横浜市神奈川区新浦島1-1-32 ニューステージ横浜
NTTエレクトロニクス株式会社 エレクトロニクス事業ユニット 石田
e-mail:bc-dsp@ntt-el.com

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