弊社取締役 河内正夫が紫綬褒章を受章-光集積回路(PLC:平面光波回路)技術の開発で-
2008年4月28日

4月29日付けで政府から平成20年度春の褒章が発令され、弊社取締役の河内正夫が紫綬褒章を賜ることになりました。伝達式は5月16日(金)に執り行われます。

この紫綬褒章は、「学術、芸術上の発明、改良、創作に関して事績の著しい方」を授与対象として贈られるもので、このたびの受章は、光ファイバ製法を応用した高純度なガラス厚膜形成技術とLSIの微細加工技術を融合することにより、平面基板上に光ファイバとの接続が可能な石英系ガラスの光集積回路、すなわち平面光波回路(PLC:Planar Lightwave Circuit)技術を世界で初めて実現し、光通信システムの構築に必要な光の分岐、合分波、切替などの機能をもつ集積型光部品を産出し、世界的な光部品産業創出に大きく貢献したことが評価されました。

受章者挨拶

このたび紫綬褒章受章の栄に浴し、身に余る光栄に存じます。これもひとえにNTT研究所をはじめとする関係各位のご指導、ご支援の賜物と心から感謝申しあげます。この栄誉は、平面光波回路(PLC)技術開発に際しての、光回路設計、作製プロセス、実装、評価、そしてシステム応用に及ぶチームワークの先導性と、光ファイバ通信を支える光部品産業としての定着化が評価され、関係各位を代表して賜ったものと思っております。現在、石英系PLCは弊社の主力フォトニクス製品群を構成していますので、この栄に恥じることがないよう、さらに精進を重ね、学術と産業、そして社業の発展のため、引き続き微力を尽くす所存です。

平成20年4月28日
取締役 河内 正夫

参考

河内 正夫(かわち まさお)
1949年3月17日、群馬県生まれ
NTTエレクトロニクス株式会社
取締役

略歴

1973年3月
東京工業大学大学院 理工学研究学科 電子物理工学専攻 修士課程修了
4月
NTT入社。以来、液晶表示、光ファイバ、平面光波回路の研究開発に従事
1978年12月
液晶の電気光学効果の研究により東京工業大学より工学博士号授与
1982年2月
カナダ連邦政府通信研究所 交換研究員(1年間)
1994年2月
光エレクトロニクス研究所 光複合部品研究部長
1996年7月
基礎技術総合研究所 研究企画部長
1998年7月
光エレクトロニクス研究所長
1999年1月
未来ねっと研究所長
2003年7月
先端技術総合研究所長
2005年7月
NTTエレクトロニクス(株)取締役 技術開発本部長
2008年4月
現職

主な研究業績

NTT入社以来一貫して光部品の研究開発に携わり、初期の液晶表示の研究に続いて、通信用光ファイバと光集積回路の先駆的研究とその開発に従事。主な研究業績は、気相軸付け(VAD:Vapor-phase Axial Deposition)法による石英系単一モード光ファイバ作製技術の開発と、今回の褒章の対象となった石英系平面光波回路(PLC:Planar Lightwave Circuit)技術の開発。

光ファイバ通信システムの構築とその発展には、光の分岐、合分波、切替などの機能をもつ光部品が不可欠であった。従来、レンズと薄膜フィルタなどを組み合わせたバルク型光部品や、光ファイバに融着や延伸などの処理を施して作られるファイバ型光部品はあったが、量産性に乏しく、低コスト化や小型集積化が困難といった課題があった。河内は、光ファイバ作製技術であるVAD法を応用した高純度なガラス厚膜形成技術とLSIの微細加工技術を融合することにより、平面基板上に光ファイバとの接続が可能な石英系ガラスの光集積回路技術、すなわち石英系PLC技術を世界で初めて実現し、従来の光部品の課題を克服した。

石英系PLCの成功により、国内外で光導波路の研究開発が活発となり、光回路設計、プロセス技術、実装、評価技術などが発展し、光通信システムを支える集積型光部品技術として成長し、世界的な光部品産業創出へ大きく貢献した。

主な特許

特許第1374991号 「ガラス光導波膜の製造方法および製造装置」
特許第2653883号「広波長域動作導波型光分岐素子」

主な受賞・表彰

  • 櫻井健二郎氏記念賞(石英系平面光回路の研究開発)
  • 電子情報通信学会業績賞(光信用平面光波回路の先駆的研究)
  • 科学技術庁長官賞・科学技術功労賞(火炎堆積法による石英系平面光波回路の開発)
  • 大河内記念技術賞(石英系平面光波回路の開発)
  • IEEE Fellow(For contributions to optical fiber communications using silica-based optical fibers and planar lightwave circuits
  • 電子情報通信学会フェロー(光ファイバ及び平面型光波回路の研究開発における多大な貢献)
  • 応用物理学会フェロー(平面光波回路の先駆的研究および光回路デバイスの開発)

主な発表論文

  • 光ファイバ関連
    1. Low-loss single-mode fibre at the material-dispersion-free wavelength of 1.27µm”, Electron Lett., 13, pp.442-443, 1977.
    2. 100km single-mode VAD fibres”, Electron. Lett., 17, pp.57-58, 1981.
  • 平面光波回路関連
    1. Fabrication of SiO2-TiO2 glass planar optical waveguides by flame hydrolysis deposition”, Electron. Lett., 19, pp.583-584, 1983.
    2. Silica waveguides on silicon and their application to integrated optic components”, Optical and Quantum Electronics 22, pp.391-416, 1990.
    3. “プレーナ光波回路デバイス”, 電子情報通信学会誌C, Vol.J81-C2, pp.513-523, 1998.

公職歴等

文部科学省 科学技術・学術審議会 研究計画・評価分科会 委員
科学技術振興調整費審査部会 戦略拠点育成WG 委員
総務省 21世紀ネットワーク基盤技術研究推進会議 構成員

主な学会委員等

電子情報通信学会 光エレクトロニクス研究専門委員会 委員長
電子情報通信学会 企画理事
IEEE/LEOS 日本チャプタ運営委員会 副委員長
IEEE/LEOS 日本チャプタ運営委員会 委員長
電子情報通信学会 エレクトロニクスソサイエティ次期会長 現在に至る。
以上

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