Tech Info

IOWN実現に向けたキーデバイス開発

2019年にNTTはIOWN(Innovative Optical and Wireless Network)構想[1]という新しいネットワーク構想を提唱しました。IOWNは将来の情報通信のインフラで、よりスマートな世界の実現を目指しています。IOWNでは、あらゆるサービス、ヒト、モノがエンド・トゥ・エンドでつながり、この結果、私たちがストレスなく心地よく「ナチュラル」にサービスを享受できるようになることを目指しています。IOWNの実現には、最先端の光通信技術、コンピューティング技術が必要で、次の3つの技術分野から構成されています。オールフォトニックネットワーク(APN)、デジタルツインコンピューティング(DTC)、コグニティブファウンデーション(CF)です。APNは、光の技術をコアネットワークからネットワーク端末までネットワークすべてを光化するものです。DTCは、リアル世界とネットワーク上のデジタル世界を組みあわせることで未来を予測します。CFはネットワーク上のあらゆるリソースを結合し制御します。これらAPN、DTC、CFの3つは、それぞれ将来の通信、計算(コンピューティング)、ネットワーク上のリソース割り当てを担当する重要機能を担っています。

ここではIOWNでの情報通信を支えるAPNについて説明します。APNでは光技術を最大限活用して、次の3つの性能目標の達成を目指しています。目標の一つめは、電力効率100倍以上の低消費電力、二つめは100倍以上の伝送効率を実現する大容量・高品質性能、三つめは1/200以上のエンドーエンドでの遅延短縮です。これら目標は従来の電子デバイスでは困難です。したがって、光技術をネットワークの隅々まで導入することがIOWNを実現するのに非常に重要ということができます。

APNの実現は一朝一夕ではありません。実現の重要なキーテクノロジーが、光電融合技術です。これまでNTT研究所は、数多くの電子デバイス、光デバイス技術を生み出して、通信ネットワークの先端化を支えてきています。私たちNTTエレクトロニクスは研究所の先端デバイス技術を活かした電子デバイス製品、光デバイス製品を提供してきました。たとえば、石英系プレーナ光波回路技術による光スプリッタ製品や、最近のデジタルコヒーレント通信向け信号処理用LSI(DSP-LSI、“ExaSPEED”と名付けています)はその例です。図にAPN実現に向けた光電融合デバイスのロードマップを示します。第1ステップのデバイスは、シリコンフォトニクス(SiP)技術を活用したCOSA(Coherent Optical Subassembly)です。SiP技術は、LSIの微細加工技術を利用して、LSI基板として使われるSi基板上に光デバイスを作製する技術です。前回のTech. InfoにCOSAについて技術紹介が書かれていますので参照ください。第2ステップデバイスに向けて、NTTエレクトロニクスではコパッケージ技術を導入する予定です。デジタルコヒーレント通信用先端DSP-LSIとCOSAを一体化してシングルパッケージに収める技術です。これにより、デジタルコヒーレント通信用光トランシーバが小型化され、低消費電力化が可能となります。さらに次のステップでは、LSIと光デバイスが同一基板上に形成されるようになります。これら技術により、NTTエレクトロニクスでは、NTT研究所が挑戦する短距離の光通信(光配線)技術を使ったチップ間光通信の実現に貢献していきます。

IOWNに向けたNTTエレクトロニクスの取り組みについては[2]を参照ください。光電融合デバイスCOSAの開発状況は[3]を参照ください。私たちNTTエレクトロニクスのIOWNに向けた取組みはこれからも折にふれて紹介していきます。

キーデバイス開発ロードマップの概要図。低消費電力で高速通信が可能な次世代ExaSPEEDを設計。
図 キーデバイス開発ロードマップ

製品紹介・Tech Info

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