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【学生向け】PLC(光平面回路)

第4回目は、学生向けにPLC(光平面回路)を特集します。NTTエレクトロニクスのPLC部門では、光通信ネットワークを支えるPLCチップ・モジュールを設計しています。前半ではPLC技術の概要について、後半では若手エンジニアから見た、NTTエレクトロニクスでの仕事とその面白さや魅力について紹介します。

PLC技術の概要

このページを見ている皆さんは、当然ながらインターネットを使ってこのページを表示しているわけです。それでは、インターネットとはどのように構成されているのでしょうか。
図1にインターネットの構成図を示します。インターネットはその名の通りネットワークの集合体な訳ですが、大きく分けてコア・メトロ・アクセスと呼ばれる3つの階層のネットワークで構成されています。コア・ネットワークは、100kmを超える都市間/地域間網、メトロ・ネットワークは、100km未満の地域内網、アクセス・ネットワークは、皆さんのご自宅から通信事業者ビルまでの数kmから数10 km程度の通信ネットワークの事を示しています。

インターネットの構成図
図 1

光通信ネットワークの各ノードでは、様々な信号処理が必要になります。この信号処理は、速度・消費電⼒の制約を考えると、光を光のままで信号処理するのが有利です。
例えば…

  • コア/メトロ・ネットワークでは、波長分割多重(WDM: Wavelength Division Multiplexing)伝送方式の光信号が用いられるため、任意の波長の信号光を合分波するデバイスが必要となる。
  • アクセス・ネットワークでは、1台の局側装置で複数(最大32)ユーザとの通信を時分割処理するため、光信号を1:Nに分岐する光スプリッタが必要となる。

※1本の光ファイバで複数の波長チャネルを多重伝送する方式。

これを実現するのが、シリコンや石英基板上で光配線を可能にする光導波路です。フォトリソグラフィやドライエッチングなどLSIに用いられる微細加工技術を使い,周囲より屈折率の高いコアと呼ばれる部分を基板上に作り出すことで,光を伝送します。この光導波路を組み合わせて,特定の光学特性を持たせた部品が「PLC(Planar Lightwave Circuit,平面光回路)」です。PLCは,小型化が可能で信頼性も高いため,光ネットワークの基幹部品として,さまざまな用途に利用されています。

光通信ネットワークで用いられる代表的なPLC部品を図2に示します.コア・メトロネットワークではアレイ導波路回折格子(AWG: Arrayed-Waveguide Grating)がWDM用光合分波器として用いられ,アクセス・ネットワークでは光スプリッタが実用化され広く用いられています。
PLCはAWGやスプリッタの他にも、DPOH(Dual Polarization Optical Hybrid:偏波多重光ハイブリッド)やMCS(Multi Cast Switch:マルチキャストスイッチ)等、目的に応じて様々なものがあります。NTTエレクトロニクスでは、多種多様なPLCを製造・販売しています。これらのPLCの販売先は国内、中国、ヨーロッパ、アメリカと世界中に渡り、世界各国の光通信システムに導入され、ネットワークインフラを支えています。

光通信ネットワークで用いられる代表的なPLC部品
図 2

※DPOH…1つのPBS、1つの偏波ローテータと2つの90度光ハイブリッドを1チップの集積化したPLCで、光受信フロントエンドに必要な光信号処理を担う。高精度で安定な光位相・干渉制御が実現でき、DSPと組み合わせることでデジタルコヒーレント受信機を構成することができる。

※MCS…多方路ROADM(Reconfigurable Optical Add/Drop Multiplexer)システムの運用性を向上するCDC(Colorless, Directionless and Contentionless)機能を小型で経済的に実現するための光スイッチ。

担当業務のご紹介

我々の仕事ですが、NTT研究所との繋がりが深い部署と感じています。PLCは元々、NTT研究所で研究されてきたものですが、例えば「小型化の実現」というテーマを考えてみると、設計・製造の両面から検討が必要になるため、両社の協力が必要不可欠となります。例えば2000年頃のAWGは、100GHz間隔で16chの信号を合分波する機能を持ち、サイズは35mm×35mm程度でした。チップのサイズを小型化するためには、シリコン基板上に堆積するコア膜の屈折率を高め、かつ高精度に制御する必要があります。NTT/NTTエレクトロニクスでは、製造技術の高精度化を進め、現在では50GHz間隔で96chの信号を合分波する機能を持つAWGを、面積比20%減のサイズで実現しています。面積比と帯域比の積を取れば、実に15倍もの効率化を達成しているといえます。このように、NTTエレクトロニクスではNTT研究所で培われた最先端技術を用いて製品開発を実施し、世に送り出すことで、世界の通信システムの発展に貢献することができます。

私たちは、新分野の開拓精神も旺盛です。今後、PLCは非通信領域での活用も考えられています。例えば、下記のような領域です。これらの製品開発は前例が無く大変な活動ですが、将来大きな市場となる可能性を秘めているため、現在進行形で開発を進めています。

  • 可視光向けPLC:0.5µm前後の可視光波長帯用のPLC。スマートグラス等への応用が期待されている。
  • LiDAR(Light Detection and Ranging)向けPLC:LiDARは光を利用した物体検知デバイス。自動運転車への搭載が期待されているが、現在はまだ価格が高価。PLCによる価格低減化が期待されている。
  • 量子暗号用PLC:量子暗号は、古典暗号から脱却した新たな暗号化システムであり、攻撃者がどれほどの計算リソースを持っていても決して解読されない。量子暗号システム実現のためには単一光子の送受信が必要となり、PLCの光干渉計によるノイズ低減が期待されている。

また、私たちは、当然ながら自己改革に余念がありません。その一つとして、今後更に高機能な光デバイスを高精度かつ安定に製造するため、プロセスデータ取得の自動化、データベース化を進めています。この実現のために、下記のように一つ一つ改善を進めています。

  • 測定装置の自動化、高精度化:人の操作による測定が前提の装置では、取得できる製造データ量に限界があります。また、精度が人によってばらつく可能性もあります。このため、測定を全自動、かつ高精度に実施できる装置が必要となり、国内・海外メーカとのコラボや内製により様々な装置を開発しています。
  • 測定データの見える化:上記により、これまでよりも得られるデータ量が増加します。増えたデータを人力で数値処理するのは手間がかかりますので、BIツールやデータベースを活用し、データの取得だけでなくその有効活用を進めています。

これらは総じて「DX化」と呼ばれる世界の潮流と重なっており、将来の更なるコア・デバイスの実現のために、日々開発を進めています。

NTTエレクトロニクスでは、このような先進的な活動に若いうちから携わる事が出来ます。例えば、入社1~3年目の若手でも、

  • 組織横断的なビッグプロジェクトの担当者として活躍することが可能
  • プロジェクトによってはNTT研究所の研究者と直接議論し開発の方向性を決定するなど、常に世界最先端の技術に触れることが可能
  • 上記のような活動の中で、特許の取得も可能。企業では権利化が非常に重要であるため、特許執筆のサポートもかなり手厚い。

…のような重要な仕事に携わっている方が数多く居ます。若いうちからこのような先端技術に触れることができるのも、NTTエレクトロニクスの魅力の1つです。その分大変な場面もありますが、世界最先端技術に触れながら仕事がしてみたい・日々新しい事にチャレンジできるような仕事がしてみたいという方、是非お待ちしています!

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