Tech Info

最先端デジタルコヒーレント光通信規格 ─ OpenZR+

OpenZR+ Multi-Source Agreement(MSA)は、デジタルコヒーレント光通信技術に関して、QSFP-DDやOSFPといった小型のプラガブルモジュールへの実装や相互接続性を考慮した業界標準規格です。小型プラガブルモジュールMSAは、データセンタ内のEthernetを対象に検討・普及が進み、更にはデータセンタ間への適用が注目されています。また、高速大容量通信の進展に伴いデジタルコヒーレント光通信技術の役割が大きくなる中で相互接続性の重要性が増しており、OpenZR+ MSAでも考慮しています。良く似た仕様にOIFで規定された400ZRがありますが、400ZRがクライアント信号として400GBASE-R(400GbE)信号を収容するのに対し、OpenZR+は100G/200G/400GbEの多重収容が可能です。更に、400ZRよりも強力な誤り訂正符号(OFEC)を採用することでより長距離での伝送を可能とする仕様になっています。 NTTエレクトロニクス社は、デジタルコヒーレント光通信のキーデバイスであるDigital Signal Processor(DSP)を開発・販売する立場でOpenZR+ MSA設立時から参画し、仕様決定に取り組みました。2020年9月に発行されたバージョン1.0[1]は、波長グリッドが100GHzの仕様であり、エルビウム添加光ファイバアンプ(EDFA)とRamanアンプとの組み合わせで400Gクラスの信号を1000km以上伝送が可能となっています[2]

また、小型プラガブルモジュール実装と相互接続性を伴うデジタルコヒーレント光通信は、必要な個所に最先端/最高性能の装置の導入を可能とすることにも大きな役割を果たすと期待されています。従来、光伝送ネットワークに用いられている装置は伝送機能部から交換機能部までが一体化されたものであり、専用のソフトウェアで制御するため、一部の機能部のみを高機能化するということが難しいという課題がありました。これに対し、装置機能を最適に分割し、分割した機能・装置を自由に組み合わせて制御するDisaggregationあるいはOptical Open Line System(OOLS)が提案されています。OpenZR+ MSAが考慮する相互接続性は、Disaggregation/OOLSを実現するための重要な要素であり、NTTエレクトロニクス社も他社製品との相互接続性の実現に向けて、開発・評価を行っています。その一つの成果が、OpenZR+ MSAのメンバーである富士通オプティカルコンポーネント(FOC)社とAcacia社の三社で共同検証した、光モジュールとDSPを用いたOpenROADM/OpenZR+仕様による相互接続検証の成功です[3]。光デジタルコヒーレント通信は、従来のNRZ符号等を用いた光信号のON/OFF変調通信と比べて高速長距離伝送に適している一方、調整が複雑です。それ故、相互接続検証の実証は仕様検討の成否に留まらず、業界標準として規定されたMSAの仕様の有効性を世界に知らしめるものであり、製品リリースにおいても重要な取り組みです。

現在、OpenZR+ MSAでは、アプリケーションの多様化に向けた波長グリッドの75GHz化や400G超の仕様検討を開始しています。NTTエレクトロニクス社も引き続きOpenZR+ MSAの議論に参加、業界標準規格をリードし、タイムリーな製品開発・販売を行っていきます。

参考文献

[1]
Open ZR+ MSA "Technical Specification," http://openzrplus.org/documents/, September, 2020.
[2]
OpenZR+ MSA "White paper: 400G Digital Coherent Optics for Multi-Haul," http://openzrplus.org/documents/, September, 2020.
[3]
NTTエレクトロニクスNews release: "Acacia Communications and NTT Electronics Announce Successful Interoperability Testing of 400ZR and OpenZR+," https://www.ntt-innovative-devices.com/en/news/2020/10/successful-interoperability-testing-of-400ZR-OpenZR.html, October, 2020.

製品紹介・Tech Info

ページの先頭へ